肺血管への腫瘍塞栓で発症した肺原発と思われる絨毛癌の1例
田尻 さくら子1) 小澤 秀樹2) 小松 昌道2) 端山 直樹1) 近藤 祐介1) 伊藤 正仁2) 岡 晶子2) 浦野 哲哉1) 近藤 哲理1)
〒259-1193 神奈川県伊勢原市下糟屋143 1)東海大学医学部付属病院呼吸器内科 2)同 総合内科
絨毛癌は妊娠後の女性にまれに発生する悪性腫瘍で肺転移のリスクが高い.しかし肺血管への腫瘍塞栓で発症した症例では本症を念頭においた検査がなされずに診断が遅れることが多く,報告例も稀である.症例は28歳女性.正常分娩の出産3カ月後より徐々に呼吸困難が出現し,経気管支肺生検と画像所見から特発性器質化肺炎として治療が行われたが,症状増悪のため紹介された.胸部CT所見から肺塞栓症と診断して治療を行った.しかし,抗凝固療法に抵抗性であったために,診断と治療を兼ねて血栓除去術を行ったところ,絨毛癌と診断された.原発は不明であったが化学療法は奏効し,2年後の現在も寛解した状態で外来通院中である.化学療法により絨毛癌が治療可能な腫瘍となった今では,本疾患の早期診断の意義は高い.
Received 平成20年5月15日
日呼吸会誌, 46(12): 1029-1033, 2008