転移性肺腫瘍との鑑別が困難であった粟粒結核の1例
難波 史代 石賀 充典 岸本 道博 栗原 武幸 玉田 貞雄 沖本 二郎
〒700-8505 岡山県岡山市中山下2-1-80 川崎医科大学附属川崎病院呼吸器病センター
我々は,肺癌と粟粒結核の合併を,肺癌とその肺内転移と考えていた症例を経験したので報告する.症例は80歳女性.腹水を主訴に食欲減退,体重減少をきたした.胸部CT上,右下葉に腫瘤影と全肺野に多発する粒状影を認めた.FDG-PET検査では腫瘤影,肺野の粒状影および腹部にも異常集積が認められたため,肺癌と肺内転移,癌性腹膜炎と診断した.しかし病理解剖の結果,原発性肺癌と粟粒結核,結核性腹膜炎の合併であった.肺癌に伴うPET陽性の粒状影は肺癌の肺内転移と診断されやすいが,剖検により粟粒結核の合併と確診された症例であり,病理解剖の必要性を再認識させられた.
Received 平成21年4月17日
日呼吸会誌, 47(11): 1041-1045, 2009