髄膜癌腫症によるGarcin症候群を呈した肺腺癌の1例
會田 康子 五十嵐 朗 井上 純人 阿部 修一 柴田 陽光 久保田 功
〒990-9585 山形県山形市飯田西2-2-2 山形大学医学部内科学第一(循環・呼吸・腎臓内科学)講座
髄膜癌腫症によってGarcin症候群を呈した肺腺癌の1例を報告する.症例は肺腺癌及び腹腔内リンパ節転移(cT2N3M1)と診断された50歳代男性.CisplatinとDocetaxelによる化学療法を施行したが,経過中に左難聴,耳鳴,眩暈が出現し,当初Cisplatinによる聴神経障害が疑われた.その後他剤に変更し化学療法を継続していたが,突発性の左顔面神経麻痺が出現し,難聴も聾の状態まで悪化するなど,多発性の脳神経症状を呈した.精査の結果,頭蓋底と脊髄に腫瘍を認め,髄液細胞診で腺癌細胞を検出した.多発性の脳神経症状の原因は肺癌の転移に伴う髄膜癌腫症により,Garcin症候群を来たしたためと考えられた.Methotrexate髄腔内注射と全脳照射を行い,神経症状の進行は停止した.肺癌の頭蓋底転移によるGarcin症候群の報告は少ないが,脳神経障害の鑑別疾患として重要と考えられた.
Received 平成21年5月29日
日呼吸会誌, 48(1): 66-69, 2010