成人肺トキソカラ症8例の臨床的検討
吉川 正英1) 児山 紀子2) 本津 茂人2) 山本 佳史2) 小川 修平5) 中村 孝人5) 水野 陽花5) 三浦 幸子3) 三笠 桂一4) 木村 弘2)
〒634-8521 奈良県橿原市四条町840 1)奈良県立医科大学寄生虫学 2)同 第二内科学 3)同 放射線科 4)同 感染症内科 5)星ヶ丘厚生年金病院呼吸器内科
肺トキソカラ症8例を経験し,臨床像および診断と治療の留意点について検討した.男性4例,女性4例,年齢分布は27歳から57歳.臨床像では,有訴者(一過性胸痛,関節痛・移動性皮下疼痛,気胸による胸部不快感が各1例)に比べ無症状者(5例)が多いことに留意すべきである.感染経路では,待機宿主の生肝摂取によるものが5例,仔犬媒介性1例,明確ではないものが2例と食物媒介性経路によるものが多かった.血液検査では,全例で好酸球数(500/μl以上)あるいはIgE(100 IU/ml以上)の少なくともいずれかが高値で,幼虫ES抗原を使用した血清検査が陽性を示し,これらの検査項目は診断に有用であった.さらに,CTで,ハローを伴う小結節あるいはスリガラス様肺病変が特徴的で,診断的価値が高いと考えられた.治療は,自然治癒した1例を除き全例でアルベンダゾールを使用した.総治療期間は全例4週間以上と比較的長期間の治療が必要であった.
イヌ回虫 ネコ回虫 食物媒介性寄生虫疾患 血清診断 アルベンダゾール
Received 平成21年8月6日
日呼吸会誌, 48(5): 351-356, 2010