肺扁平上皮癌と縦隔腫瘍を合併したKartagener症候群の1例
堀江 真史1) 新井 秀宜2) 野口 智史1) 鈴木 勝1) 坂本 芳雄1) 岡 輝明3)
〒158-8531 東京都世田谷区上用賀6-25-1 1)公立学校共済組合関東中央病院呼吸器内科 2)帝京大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー学 3)公立学校共済組合関東中央病院病理科
症例は71歳男性.若年より慢性副鼻腔炎・難聴があり,59歳時に気管支拡張症・びまん性汎細気管支炎・内臓逆位を指摘されていた.69歳時に血痰を主訴として当院受診.胸部CT写真にて前縦隔に径5 cm大の腫瘤と右舌区に径4 cm大の腫瘤を認めた.右肺腫瘤に対して気管支鏡施行,経気管支肺生検にて扁平上皮癌(cT3N1M0 stage IIIA)と診断.同時に施行した気管支粘膜生検標本で,inner及びouter dynein armsの完全欠損が認められprimary ciliary dyskinesia(PCD)と診断した.前縦隔腫瘍に対して生検は行わなかった.右肺原発巣と縦隔に対し放射線化学療法を行ったところ原発巣は径3 cm大に縮小,縦隔腫瘍は消失した.しかし肺原発巣に生じた空洞内に緑膿菌感染症を併発し,診断後約1年の経過にて永眠された.Kartagener症候群に肺癌の合併例は数例報告されているが,縦隔腫瘍との合併は報告されていない.
Kartagener症候群 原発性線毛運動不全症 肺癌 縦隔腫瘍
Received 平成21年8月10日
日呼吸会誌, 48(5): 375-378, 2010