呼気一酸化窒素の上昇を認めた肝肺症候群の1例
濱本 淳二 鳥羽 聡 廣佐古 進 中村 和芳 藤井 一彦 興梠 博次
〒860-8556 熊本市本荘1-1-1 熊本大学生命科学研究部呼吸器病態学分野
症例は72歳,男性.3年前より労作時呼吸困難が出現.近医にて間質性肺炎と診断され,2年前より在宅酸素療法を導入し外来通院中であった.その後,徐々に呼吸困難感が増悪したため,精査加療目的にて当科紹介入院となった.検査の結果,アルコール性肝硬変症が存在し,動脈血液ガスにて肺胞気―動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)の増大を認め,造影心エコー及び99mTc-macroaggregated albumin(MAA)によるwhole bodyシンチにて肺内右左シャントが証明されたことより,肝肺症候群と診断した.更に呼気一酸化窒素(nitric oxide;NO)を測定したところ有意な上昇が認められた.ヒト及び動物モデルにおいて,肝肺症候群の病態にNOの関与が推測されている.しかし本邦において肝肺症候群患者の呼気NOを測定した報告はなく,病態を考える上で重要な所見と考えられたので報告する.
Received 平成21年8月19日
日呼吸会誌, 48(5): 379-384, 2010