ゲフィチニブ耐性癌性髄膜炎に対してエルロチニブが奏効した非小細胞肺癌の1例
藤倉 雄二 森島 祐子 太田 恭子 大塚 茂男 本間 晋介 栗島 浩一 檜澤 伸之
〒305-8577 茨城県つくば市天王台1-1-1 筑波大学大学院人間総合科学研究科呼吸病態医学分野
症例は60歳男性.上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌に対し化学療法剤およびゲフィチニブが投与され,長期にわたって病勢の安定が得られていたが,癌性髄膜炎が疑われて入院した.MRIにて中脳の脳表や小脳回に沿って線状の造影効果がびまん性に認められ,髄液検査では細胞数増加,CEA高値がみられた.診断当初,神経学的徴候はなかったが,約2週間後には失見当識,構音障害,歩行障害が出現した.ゲフィチニブから白金製剤を主体とした化学療法に変更したが改善なく,またゲフィチニブの再投与も奏効せず,エルロチニブを開始した.治療変更1週間後には神経学的徴候は軽快傾向を示し,MRIや髄液所見も改善した.ゲフィチニブ投与中に発症した癌性髄膜炎に対して,エルロチニブが有効である症例が存在することが示唆された.両薬剤の特性の違いについては,今後さらなる知見の蓄積が期待される.
Received 平成21年9月14日
日呼吸会誌, 48(5): 391-396, 2010