クロピドグレル(Clopidogrel;プラビックス®)による薬剤性肺炎が疑われた1例
玉垣 学也1) 松下 晴彦2) 鈴村 倫弘2) 渡邊 徹也3) 山田 政司2) 平田 一人3)
〒544-0004 大阪府大阪市生野区巽北3-20-29 1)育和会記念病院呼吸器内科 〒594-0071 大阪府和泉市府中町4-10-10 2)和泉市立病院 〒545-8585 大阪市阿倍野区旭町1-4-3 3)大阪市立大学大学院呼吸器病態制御内科学
症例は65歳男性.他院で狭心症と診断され,経皮的冠動脈形成術後,クロピドグレルを含む内服薬を開始されていた.投与6カ月後に撮影した胸部X線写真にて両側浸潤影を指摘され,精査加療目的にて当院紹介入院となった.自覚症状はないもののCRP,ESRの上昇,気管支肺胞洗浄液所見でリンパ球の増加,CD4/CD8の低下が認められた.当初は器質化肺炎を疑い,クロピドグレルの内服を継続したままプレドニゾロンを30 mg/dayで開始したところ,胸部X線所見の改善はみられなかったが,クロピドグレルに対する薬剤リンパ球刺激試験が陽性であったため,クロピドグレルをチクロピジンに変更したところ胸部異常影の改善がみられた.検索の範囲内では類似の抗血小板薬のチクロピジンによる薬剤性肺炎の報告は散見されるが,クロピドグレルの薬剤添付文書にはまれな副作用として間質性肺炎の記載はあるものの,海外においてもクロピドグレルによる薬剤性肺炎の報告例はない.本症例はクロピドグレルでも薬剤性肺炎が起こりうることを示唆した最初の報告例である.
薬剤性肺炎 クロピドグレル 薬剤リンパ球刺激試験(DLST) プレドニゾロン
Received 平成21年10月16日
日呼吸会誌, 48(5): 404-408, 2010