成人喘息患者の血清総IgE値,抗原特異的IgE抗体保有状況の検討
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背景・目的:本邦の成人喘息患者の血清総IgE,抗原特異的IgE抗体の保有状況,およびそれらに影響を与える因子については,十分に検討がなされていない.今回,成人喘息患者の血清IgEと関連がある因子について検討した.方法:16歳以上の喘息患者5,067名(男性2,047名,女性3,020名)を出生年度により4つの世代,すなわち世代1:1925年までの出生群,世代2:1926~1945年の出生群,世代3:1946~1965年の出生群,世代4:1966年以降の出生群に分け,二つの検討を行った.第一は各世代の血清総IgE値高値(300 IU/ml ≦)者率,ダニ,スギ花粉,カンジダ特異的IgE抗体陽性率(RAST 2≦)を調べ,各々の抗体保有率に差があるかを検討し,次に世代毎にこれらの保有状況に1997年から2005年までの9年間で変動があるかを検討した.結果:(1)最近の世代ほど総IgE高値者率,ダニ,スギ花粉IgE抗体陽性率が高い傾向がみられた.(2)総IgE高値者率,ダニ,スギ花粉,カンジダIgE抗体陽性率は男性が女性よりも有意に高値であった.(3)喫煙者は非喫煙者に比べ,総IgE高値者率,ダニ,スギ花粉,カンジダIgE抗体陽性率が有意に高率であった.(4)世代1を除いて,1997年から2005年の9年間で,総IgE高値率,ダニ,カンジダIgE抗体陽性率は経年的に減少した.(5)多重ロジスティック回帰分析の結果から,血清総IgE値とカンジダ特異的IgE抗体高値は,年齢(若年),性別(男性),および喫煙状況(喫煙者)と,ダニ特異的IgEは年齢および性別と,スギ花粉特異的IgEは性別,年齢,および世代と有意に関連していた.結語:成人喘息の血清総IgE,ダニ,カンジダ,スギ花粉特異的IgE高値には,性別,喫煙,加齢,世代が関連していた.しかし,そのそれぞれの関連の度合いは抗原により異なっていた.
Received 平成21年9月14日
日呼吸会誌, 48(6): 409-418, 2010