巨細胞性心筋炎・多発筋炎を合併した浸潤性胸腺腫の1剖検例
磯部 和順1) 後町 杏子1) 鏑木 教平1) 杉野 圭史1) 赤坂 喜清2) 本間 栄1)
〒143-8541 東京都大田区大森西6-11-1 1)東邦大学医療センター大森病院呼吸器内科 2)同 病理部
症例は75歳,男性.2004年10月に浸潤性胸腺腫(WHO分類B3,正岡分類IVa期)と診断される.同年11月よりドキソルビシン+ビンクリスチン+サイクロホスファミド+シスプラチン療法を計8コース施行していた.さらに2006年4月に原発巣に対し胸部放射線療法(TD60 Gy),次いで,2008年7月よりカルボプラチン+パクリタキセルを2コース施行した.2008年9月発熱,頸部痛を主訴に来院.CRP,筋逸脱酵素の上昇を認め,精査を行うも髄膜炎や虚血性心疾患は否定的であった.入院時に低ガンマグロブリン血症を認めガンマグロブリン製剤と抗生剤を投与し解熱した.しかし,入院第6病日より,頸部痛の増悪,腰痛が出現.第9病日,突然ショック状態となり死亡した.剖検では頸部筋肉,腸腰筋および心筋内に巨細胞浸潤を伴う筋炎を認めた.以上より,死因は巨細胞性心筋炎によるものと診断した.浸潤性胸腺腫に巨細胞性心筋炎・多発筋炎を合併することは極めて稀であり報告する.
Received 平成21年9月3日
日呼吸会誌, 48(6): 432-438, 2010