慢性偽性腸閉塞を契機に発見された限局型小細胞肺癌の1例
三船 大樹* 塚田 裕子** 細井 牧 岡島 正明 横山 晶
新潟県立がんセンター新潟病院内科 〒951-8520 新潟県新潟市中央区旭町通1番町754番地 *現 新潟大学医歯学総合病院第二内科 **現 在宅ケアクリニック川岸町
症例は53歳女性.嘔吐,便秘を主訴として,近医に腸閉塞の診断で入院した.上下部消化管内視鏡検査など精査を行ったが原因不明であった.胸部X線・CTで左肺門および縦隔リンパ節の腫大を認めた.腫瘍マーカーはProGRPが軽度上昇しており,小細胞肺癌が疑われ,肺病変および原因不明の腸閉塞の精査・加療のため,当院へ転院した.経気管支穿刺吸引細胞診で小細胞肺癌と診断された.腸閉塞は試験開腹でも器質的異常を認めなかったことから,傍腫瘍性神経症候群の1つである慢性偽性腸閉塞と判断した.化学放射線療法を施行したところ腫瘍は完全寛解となり,腹部症状も著明に改善した.後に血清抗Hu抗体が陽性と判明した.慢性偽性腸閉塞を合併する小細胞肺癌は稀であり,腹部症状が改善し良好な治療効果が得られた貴重な症例であったため報告する.
Received 平成21年10月13日
日呼吸会誌, 48(6): 439-443, 2010