インフリキシマブ療法中に発生した結核関連血球貪食症候群の1例
沼倉 忠久 松浦 圭文 滝口 寛人 原 靖果 天久 康絢 堀江 孝至
〒963-8558 福島県郡山市西ノ内2-5-20 財団法人太田綜合病院付属太田西ノ内病院呼吸器センター内科
クローン病患者のインフリキシマブ治療中に発症した血球貪食症候群(Hemophagocytic Syndrome:以下HPS)を伴った結核の1例を報告する.48歳女性.発熱,下痢,倦怠感を訴え入院.クローン病の再燃と診断され治療受けるも改善なく,胸部X線上浸潤影を指摘され呼吸器内科紹介となる.喀痰,骨髄の塗抹およびPCRにて結核と診断された.血球減少,フェリチン値上昇,肝脾腫,播種性血管内凝固症候群などの所見に加え骨髄検査からマクロファージによる白血球,血小板貪食像を認めHPSと診断した.抗結核薬,ステロイド,γ-グロブリン製剤にて治療し軽快した.インフリキシマブ投与時発生結核は典型的な臨床症状や空洞や結節病変などの特徴的な画像所見を欠くことから診断が困難で治療が遅れ重症化することがある.本例はインフリキシマブ使用による結核関連HPSの初めての報告で示唆を与える興味深い症例と考えられた.
Received 平成21年10月27日
日呼吸会誌, 48(6): 449-453, 2010