耳下腺多形腺腫由来癌によるPulmonary tumor thrombotic microangiopathyの1剖検例
宇留賀 公紀1) 藤井 丈士2) 黒崎 敦子3) 花田 豪郎1) 高谷 久史1) 宮本 篤1) 諸川 納早1) 岸 一馬1)
〒105-8470 東京都港区虎ノ門2-2-2 1)国家公務員共済組合連合会虎の門病院呼吸器センター内科 2)同 病理部 3)同 放射線診断科
53歳男性.2007年7月より前医で耳下腺多形腺腫由来癌(唾液腺導管癌)に対して化学療法を施行されたが,その後は治療の希望がなく経過観察されていた.2008年3月頃から呼吸困難の増悪を自覚し,当院に入院した.胸部CTでは非区域性の僅かなすりガラス影,血流シンチグラフィーでは両肺に多発小欠損像,心臓超音波検査では著明な肺高血圧を認めた.血清のvascular endothelial growth factor(VEGF)は,正常範囲内であった.抗凝固療法を行ったが,入院第23日目に循環不全により死亡した.病理解剖を行い,Pulmonary tumor thrombotic microangiopathy(PTTM)と診断した.腫瘍細胞は免疫組織化学的にVEGF弱陽性であった.唾液腺腫瘍に続発したPTTMの報告はこれまでなく,貴重な症例と考えられる.
PTTM 肺腫瘍塞栓 VEGF 耳下腺多形腺腫由来癌(唾液腺導管癌)
Received 平成21年12月3日
日呼吸会誌, 48(6): 463-468, 2010