巨大腫瘤病変を呈した肺多中心性キャッスルマン病の1例
岡元 昌樹1) 星野 友昭1) 中村 雅之1) 今村 陽平1) 藤本 公則2) 大島 孝一3) 川山 智隆1) 相澤 久道1)
〒830-0011 福岡県久留米市旭町67 1)久留米大学医学部内科学講座呼吸器・神経・膠原病部門 2)同 画像診断センター 3)同 病理部
症例は,31歳の男性.持続する咳嗽を主訴に当院を受診.胸部CTで,右肺の巨大腫瘤陰影,多発結節影および縦隔肺門リンパ節腫脹,脾腫を認めた.血液生化学検査では,多クローン性の高免疫グロブリン血症と血清CRP(14.05 mg/dl)およびIL-6(44.2 pg/ml)の高値を認めた.胸腔鏡下肺生検による病理所見では,胚中心を伴うリンパ濾胞の過形成,抗κ鎖とλ鎖抗体の両方に染色される形質細胞浸潤および肺胞隔壁の線維化を認めた.組織所見は,キャッスルマン症候群と共に炎症性筋線維芽細胞性腫瘍にも類似していた.初診から6カ月後には,無治療のまま,胸部異常陰影と生化学所見異常は自然に改善した.高IL-6値,多発リンパ節腫脹,脾腫などの臨床所見と肺病変部の免疫染色でAnaplastic Lymphoma Kinase(ALK)は陰性であったことから多中心性キャッスルマン病と診断した.巨大腫瘤を呈する多中心性キャッスルマン病は稀と考えられた.
多中心性キャッスルマン病 炎症性筋線維芽細胞性腫瘍 インターロイキン6
Received 平成22年6月11日
日呼吸会誌, 49(4): 266-270, 2011