14年間にわたり治療経過を観察している肺良性転移性平滑筋腫の1例
泉山 典子1) 三木 祐1) 斎藤 泰紀2) 鈴木 博義3) 菊池 喜博1)
〒983-8520 宮城県仙台市宮城野区宮城野2-8-8 1)独立行政法人国立病院機構仙台医療センター呼吸器科 2)同 呼吸器外科 3)同 臨床検査科病理
症例は40歳時に子宮筋腫で単純子宮全摘術の既往がある女性で,47歳時検診で肺多発結節陰影を指摘された.肺生検を施行し,病理組織像で短紡錘形の細胞増殖が認められ,7年前の子宮筋腫のものと類似していた.またエストロゲンレセプター,プロゲステロンレセプターが陽性であり,肺良性転移性平滑筋腫(benign metastasizing leiomyoma,BML)と診断した.プロゲステロンによるホルモン療法により腫瘍数,径ともに退縮していたが,2度の自己中断のたびに増大,治療再開で縮小を認め,治療開始後14年が経過した.無症状であるが,ここ4年ほどはゆっくりと陰影は増悪しており,プロゲステロンの効果が減弱してきた可能性があるため治療薬の変更を検討中である.BMLは病理学的に良性の子宮平滑筋腫が肺転移をきたし臨床的には悪性の性質を有する非常に稀な疾患であり,10年以上の長期経過の詳細な報告はない.本例は14年間にわたってプロゲステロンで治療中のBMLの1例であり報告する.
肺良性転移性平滑筋腫 子宮筋腫 ホルモン療法 プロゲステロン
Received 平成22年8月18日
日呼吸会誌, 49(4): 271-276, 2011