多発性嚢胞性陰影を呈した続発性肺クリプトコッカス症の1例
高田 誠一1)2) 吉岡 優一2) 内藤 博道2) 上妻 和夫2) 絹脇 悦生2)
〒861-8072 熊本県熊本市室園町12番10号 1)朝日野総合病院呼吸器科 2)江南病院呼吸器科
症例は80歳,女性.関節リウマチ,ステロイド糖尿病の治療中,入院の1年4カ月前に両肺多発性嚢胞性陰影を指摘され,その後徐々に陰影の増大を認めていたが,入院の2週間前より38℃の発熱,咳嗽,喀痰が出現し,肺嚢胞性陰影もさらに増大したため前医より当科に紹介入院となった.胸部X線では左上,中肺野にそれぞれ4 cm大の嚢胞性陰影を認め,胸部CTでは左S1+2の嚢胞壁の一部は肥厚し内部に鏡面像を伴っていたが,左S4,S5,右S8の嚢胞壁は薄く平滑であった.左S4の経気管支肺生検では肉芽腫形成と多核巨細胞内の酵母様菌体を認め,左S1+2の気管支洗浄液の培養でもCryptococcus neoformansが分離された.肺クリプトコッカス症は菌体の病原因子と宿主の免疫状態によって多彩な画像所見と病理組織所見を呈するが,多発性嚢胞性陰影を呈することは稀であるため報告する.
続発性肺クリプトコッカス症 多発性嚢胞性陰影 薄壁空洞 関節リウマチ ステロイド糖尿病
Received 平成22年1月25日
日呼吸会誌, 49(4): 315-320, 2011