肺膿瘍の起炎菌および臨床背景の検討
長島 修1) 佐々木 信一1) 難波 由喜子1) 桂 蓉子1) 竹川 英徳1) 栗山 祥子1) 麻生 恭代2) 吉岡 泰子1) 中澤 武司2) 富永 滋1)
〒279-0021 千葉県浦安市富岡2-1-1 1)順天堂大学医学部付属浦安病院呼吸器内科 2)同 臨床病理科
肺膿瘍の診断で入院した89例を対象に臨床背景と起炎菌についてretrospectiveに検討した.男性が89例中76例で圧倒的に多く,大酒家は29.2%,齲歯・歯周病を認めた症例は60.7%,明らかな合併症を有しない症例はわずか13.5%であった.起炎菌は推定菌を含め43例(48.3%)で分離.起炎菌を分離させるため,2003年以降特に喀痰培養,気管支鏡下検体採取や歯肉の培養を積極的に行ったところ,分離率は38.5%から56.0%に向上した.起炎菌別の症例数は,微好気連鎖球菌であるStreptococcus anginosus group 12例,嫌気性菌10例,好気性菌31例.検査室と連携した培養検査を実施することにより,菌の分離率の向上が得られた.診断学的意義で積極的に起炎菌の分離を試みることは,抗菌薬を選択するうえで臨床的意義も大きいと思われる.
肺膿瘍 Streptococcus anginosus group 嫌気性菌 歯肉培養 デエスカレーション
Received 平成23年1月19日
日呼吸会誌, 49(9): 623-628, 2011