呼吸抵抗の周波数依存性の起源:肺小葉4Dモデルを用いた気流シミュレーション研究
〒460-0002 名古屋市中区丸の内2-18-25 株式会社JSOLエンジニアリング事業部
背景と目的:呼吸抵抗の周波数依存性は換気不均等が原因であるとされてきたが,どの成分に由来するかはわかっていない.著者は肺小葉4Dモデルを用いた計算流体力学により,気流量と圧力,気道抵抗の関係を解析した.方法:肺小葉モデルは2つの隣接した肺細葉を支配する分岐細気管支からなる.ラグランジュ・オイラー任意変換法による移動境界条件下で気流解析を行ない,様々な条件における気道抵抗を算出した.結果:気道抵抗が異なると細葉内圧に差が生じ,肺組織抵抗が出現した.細葉間隔壁が圧差を解消するように移動すると,組織抵抗は0であった.前者の肺組織抵抗は,組織自体の性質ではなく,肺胞内圧不均等に由来していることがわかった.結論:肺胞内圧不均等は入力周波数が増すにつれて減少する.従って,呼吸抵抗の周波数依存性は,肺内の気道病変と肺実質性病変の不均等分布に起因する肺胞内圧不均等の状態を示す指標とみなすべきである.
インパルスオシレーション法 肺組織抵抗 呼吸インピーダンス 換気不均等
Received 平成23年4月15日
日呼吸会誌, 49(9): 629-635, 2011