珪肺症に合併した顕微鏡的多発血管炎の1例
中西 雅樹 伊達 紘二 小山 泰則 上田 幹雄 有本 太一郎 岩崎 吉伸
〒602-8566 京都市上京区河原町通広小路上る梶井町465 京都府立医科大学呼吸器内科
患者は76歳,男性.珪肺症のため他院で経過観察中,肺野の結節が増大し当科に紹介された.気管支鏡下の生検の結果,珪肺結節と確定したが,約1カ月後に左自然気胸を発症し再入院した.持続ドレナージにより気胸は速やかに改善したが,第9病日より発熱が出現.抗生剤投与を行うも両肺のすりガラス状影は増悪した.さらに第29病日にはMPO-ANCAの著明な上昇と,両下腿に多数の紫斑(3~10 mm大)が出現し,皮膚生検の結果,真皮深層の中型血管周囲に組織球・リンパ球の浸潤を認めた.顕微鏡的多発血管炎と診断し,ステロイド剤および免疫抑制剤による治療を行った.ステロイド剤開始翌日より発熱・画像所見は改善し,以後呼吸状態も安定したため第92病日に軽快退院した.ステロイド剤・免疫抑制剤により著明に改善した,珪肺症に顕微鏡的多発血管炎を合併した1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
Received 平成22年7月2日
日呼吸会誌, 49(9): 636-641, 2011