可逆性脳梁膨大部病変に伴う失調症状にステロイド投与が奏効したレジオネラ肺炎の1例
日比野 真1) 日比 美智子2) 赤澤 賢一郎1) 引野 幸司1) 大江 元樹1)
〒253-0052 神奈川県茅ケ崎市幸町14-1 1)茅ヶ崎徳洲会総合病院呼吸器内科 2)湘南鎌倉総合病院総合内科
60歳男性.3日前から発熱と頭痛,前日から歩行障害を認め来院.呼吸器症状は軽度乾性咳嗽のみであったが右背側にcracklesを認め,胸部X線で右下葉浸潤影,肝機能障害,低ナトリウム血症,筋原性酵素高値,尿中レジオネラ抗原陽性を認めレジオネラ肺炎と診断した.入院時に頭痛,測定障害,構音障害,小脳性失調性歩行を呈し,頭部MRI拡散強調画像で脳梁膨大部に直径10 mm大のhigh intensity areaを認めたために,可逆性脳梁膨大部病変を伴う脳炎/脳症を考え,ciprofloxacin(CPFX)とmethylprednisolone(mPSL)1 mg/kg/dayの投与を開始した.第15病日には軽度小脳性失調性歩行を認めるのみまで回復し,第29病日には症状は消失した.第6病日の123I-IMP SPECT(single photon emission computed tomography)は正常で,入院時の脳梁膨大部病変は神経症状の改善とともに第15病日の頭部MRIでは消失していた.抗菌薬とステロイド治療が奏効したと考えられる,可逆性脳梁膨大部病変に伴う失調症状を呈したレジオネラ肺炎という稀な1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
レジオネラ肺炎 可逆性脳梁膨大部病変 頭部MRI 拡散強調画像 可逆性脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎/脳症
Received 平成22年12月6日
日呼吸会誌, 49(9): 651-657, 2011