エルロチニブによる薬剤性皮膚血管炎の1例
高橋 洋子 海老 規之 山口 央 福正 りさ 杉本 幸弘 つる野 広介
〒820-8505 福岡県飯塚市芳雄町3-83 飯塚病院呼吸器内科
紫斑を契機に発見され,皮膚生検により確定診断に至った薬剤性皮膚血管炎の1例を経験した.症例は69歳女性,肺腺癌術後再発に対して,エルロチニブを150 mg/日で投与を開始し,8週間後に両側下腿部に紫斑を認めた.皮膚生検の結果,皮膚血管炎と診断された.肺癌転移巣の増悪を認めたこともあり,投与を中止したところ,2週間後に紫斑は軽快した.他の臓器障害をきたすことはなかった.エルロチニブは上皮成長因子受容体(EGFR)を標的としたチロシンキナーゼ阻害薬であり,副作用として皮膚障害の発生は多く,ざ瘡様皮疹が最も多い.一方,EGFR阻害薬による薬剤性皮膚血管炎はこれまでに国内外を含め,13例の報告があるにすぎず,まれな病態である.投与開始1~2カ月で発症することが多く,全例軽快している.しかし,一般に薬剤性皮膚血管炎は,薬剤投与を継続すると,全身性の血管炎症状を呈することもあり,注意が必要である.
エルロチニブ 肺癌 薬剤性血管炎 EGFR阻害薬 薬剤性皮膚障害
Received 平成23年1月11日
日呼吸会誌, 49(9): 663-666, 2011