化学療法が有効であったPulmonary tumor thrombotic microangiopathyの1例
石黒 卓1) 高柳 昇1) 安藤 正志2) 柳澤 勉1) 清水 禎彦3) 杉田 裕1)
〒360-0965 埼玉県熊谷市板井1696 1)埼玉県立循環器・呼吸器病センター呼吸器内科 2)国立がん研究センター中央病院乳腺科・腫瘍内科 3)埼玉県立循環器・呼吸器病センター病理診断科
症例は悪性腫瘍の既往のない65歳男性.労作時の呼吸困難が入院1カ月前から出現し,1週間前から増強したため近医を受診し,肺血栓塞栓症の疑いで当センターを紹介受診した.胸部CT検査では肺野にごく軽度のすりガラス状陰影を認めたが,肺動脈内の造影欠損像を認めなかった.肺血流シンチグラフィで多発する肺の微小血流欠損像を認め,高LDH血症,血小板減少症より血管内リンパ腫を疑った.骨髄検査にて悪性細胞を認め,化学療法を開始したところ呼吸状態の著しい改善を認めた.その後,悪性細胞はリンパ腫細胞ではなく癌細胞と判明した.全身検索を行ったが,原発巣は不明であった.呼吸状態の改善後に施行した経気管支肺生検にてPulmonary tumor thrombotic microangiopathyと診断した.過去の文献的考察を加え,本症例を報告する.
肺腫瘍血栓微小血管症 肺高血圧症 原発不明癌 肺腫瘍塞栓症 PTTM
Received 平成23年2月15日
日呼吸会誌, 49(9): 681-687, 2011