柴胡桂枝乾姜湯による薬剤性肺炎の1例
今井 陽平1)2) 森本 耕三1) 吉森 浩三1) 倉島 篤行1) 尾形 英雄1) 工藤 翔二1)
〒204-8522 清瀬市松山3-1-24 1)公益財団法人結核予防会複十字病院呼吸器センター 〒189-8511 東京都東村山市青葉町1-7-1 2)多摩北部医療センター
症例:68歳女性.7月24日より冷え症に対して柴胡桂枝乾姜湯が処方された.8月4日より乾性咳嗽,発熱を自覚し,近医で鎮咳薬,解熱剤が処方されたが改善せず,8日呼吸困難を自覚し当院に救急搬送された.胸部CT上,両肺野に広範にスリガラス陰影を認め,急性呼吸不全状態であった.血液検査所見,気管支肺胞洗浄(BAL)および経気管支肺生検(TBLB)所見から感染症や膠原病に伴う肺病変は否定的であり,薬剤性肺炎として矛盾しない結果であった.臨床経過と合わせ,柴胡桂枝乾姜湯による薬剤性肺炎と診断した.3年前に半夏瀉心湯を服用後に同様の病態を呈し,入院歴があることから柴胡桂枝乾姜湯と半夏瀉心湯に共通する成分の中で薬剤性肺炎の発症頻度が多いとされる黄ごんに起因したものと推測した.
Received 平成23年2月18日
日呼吸会誌, 49(9): 688-691, 2011