肺癌脊椎浸潤との鑑別に苦慮した黄色ブドウ球菌による化膿性脊椎炎の1例
内田 泰樹1) 月野 光博1) 林 栄一1) 渡邊 勇夫1) 近藤 祐一2) 山田 一成2)
〒522-8539 彦根市八坂町1882 1)彦根市立病院呼吸器科 2)彦根市立病院整形外科
65歳男性.外傷性脊髄損傷の既往があり,慢性腰痛があった.間欠的な発熱とともに腰痛増悪を認め,近医受診し対症療法を受けていた.近医受診し,MRIにて右肺S10に胸椎の破壊を伴う腫瘤影を認め,原発性肺癌の脊椎浸潤を疑われ当院紹介受診した.気管支鏡検査では悪性所見は認めず,ブラシ洗浄液培養及び血液培養から黄色ブドウ球菌を検出し,感染を疑い抗菌薬を投与した.肺癌脊椎浸潤が否定できなかったため,CTガイド下肺生検も施行したが,炎症所見を有するのみであった.第10―11胸椎の椎体圧潰が危惧され脊椎後方固定術を施行し,同時に脊椎生検を施行したが,悪性所見は得られなかった.術後抗菌薬投与にて腫瘤影の縮小を認め,経過から黄色ブドウ球菌による化膿性脊椎炎と診断した.化膿性脊椎炎の診断にはMRIは有用だが,時に診断困難で,生検組織や培養が確定診断のために極めて重要である.
Received 平成23年2月28日
日呼吸会誌, 49(9): 692-696, 2011