一般社団法人日本呼吸器学会 公式サイト
ScholarOne Manuscripts
日本呼吸器学会英文誌 Respiratory Investigation
日本呼吸器学会誌 増刊号 学術講演会プログラム 抄録集 検索用
日本呼吸器学会誌 増刊号 学術講演会プログラム 抄録集 全文PDF

書誌情報

症例

神経内分泌分化を起こした前立腺癌が肺転移したと考えられた1例

古川 陽介a 原   悠a,b 新海 正晴a 後藤 秀人a 星野 昌子a 渡邉 恵介a 山口 展弘a 川名 明彦b 石ヶ坪良明c 金子  猛a 

a横浜市立大学附属市民総合医療センター呼吸器病センター
b防衛医科大学校内科学講座2感染症・呼吸器
c横浜市立大学大学院病態免疫制御内科学

要旨

症例は71歳の男性.2007年7月,前立腺癌の診断にて他院泌尿器科にて内分泌療法(maximum androgen blockade療法)を開始し,治療前高値を示していた血清PSAは,2009年2月には正常化した.2010年2月頃に乾性咳嗽が出現,胸部X線写真にて左肺に腫瘤影を認めたため,2010年5月,横浜市立大学附属市民総合医療センター紹介初診.経気管支腫瘍生検により小細胞癌の診断を得た.一方で,血清PSAは正常であったが,前立腺腫瘍は内分泌療法中にもかかわらず増大しており,血清neuron-specific enolase(NSE)も高値を示していた.再度,前立腺生検標本の免疫染色を施行したところ,synaptophysin染色陽性であり小細胞癌の特徴を有し,肺腫瘍の病理所見と酷似していた.さらに内分泌療法前の前立腺生検標本を再評価したところ,synaptophysin染色陰性であり,本症例は臨床経過と合わせて,前立腺癌が内分泌療法後,神経内分泌分化(neuroendocrine differentiation:NED)を起こし,肺転移をきたしたと考えられた.前立腺癌の内分泌療法中に肺に出現した小細胞癌は,NEDを起こした前立腺癌の肺転移を念頭に置くことが必要である.

キーワード

前立腺癌 神経内分泌分化 転移性肺腫瘍 小細胞癌 

Received 30 Sep 2011 / Accepted 15 Feb 2012
連絡先:新海 正晴
〒232-0024 神奈川県横浜市南区浦舟4-57
横浜市立大学附属市民総合医療センター呼吸器病センター

日呼吸誌, 1(6): 481-486, 2012

Google Scholar著者名・キーワードは「Google Scholar™ 学術文献検索」の検索結果へリンクしています.