タイトル
第38巻第1号目次 Japanese/English

─ 症例 ─

画像的にBOOPを疑い,生検にてもBOOP病変が主体であった細気管支肺胞上皮癌の1例

森迫 隆弘, 小林 英夫, 永田 直一, 青木 輝浩, 相田 真介**, 玉井 誠一**
防衛医科大学校第3内科, 同 第2外科, **同 検査部

症例は75才男性.無症状で,検診にて多発性浸潤影を指摘された.陰影は検診後の3ヵ月間に明らかに進行を示した.CTでは,小嚢胞状の含気の混在するair space consolidationが主体であった.喀痰,気管支洗浄液の細胞診は陰性で,気管支肺胞洗浄でリンパ球33%と上昇を認めたため,特発性BOOPを疑い開胸肺生検を実施した.病理所見は,組織の大半を呼吸細気管支から肺胞道にかけて,線維芽細胞の増殖を伴った器質化病変が占める,いわゆるBOOP patternであった.さらに肺胞腔内の粘液貯留,肺胞壁に沿って進展する粘液産生性の細気管支肺胞上皮癌(BAC)を散在性に認めた.本例のBOOP patternの成因としては,BAC産生の粘液による閉塞と炎症性の両者の共存が考えられた.胸部CTで小嚢胞陰影を伴う浸潤影を認め,経気管支肺生検で,腫瘍細胞が見られずとも,粘液で充満した肺胞が採取された場合には,BACの可能性を考慮し,鑑別をすすめることが,重要と考えられた.
索引用語:Bronchioloalveolar cell carcinoma, Goblet cell type, BOOP, Open lung biopsy

受付日:1997年1月6日
受理日:1997年12月11日

肺癌 38 (1):69─73,1998

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