タイトル
第43巻第2号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

肺類上皮血管内皮腫の1例―文献的考察を加えて―

桜井 裕幸1, 鈴木 健司1, 渡辺 俊一1, 浅村 尚生1, 土屋 了介1, 前島 新史2
1国立がんセンター中央病院呼吸器外科, 2国立がんセンター研究所病理部

背景.肺類上皮血管内皮腫は稀な肺腫瘍の1つであり,かつては血管内細気管支・肺胞細胞腫瘍(intravascular bronchioloalveolar tumor:IVBAT)の名称で知られた疾患である.今回我々は胸部X線写真で両肺野に多発小結節影を呈する肺類上皮血管内皮腫の1例を報告すると共に本疾患につき報告されてきた文献を集計検討した.症例.症例は63歳,女性.特記すべき職業歴なし.背部痛を主訴に近医を受診した際に,胸部X線写真上,両肺野に多発する小結節影を指摘され当院紹介となった.諸検査結果で特に異常を認めず,確定診断目的に開胸肺生検を行った.組織学的には腫瘍の中心部は硝子化様基質が多くを占め,辺縁部で腫瘍細胞が肺胞充填性または胞巣状増殖を呈した.免疫組織学的には腫瘍は血管内皮細胞マーカーである第VIII因子関連抗原およびCD31,CD34に陽性所見を呈し,肺類上皮血管内皮腫と診断された.結論.本疾患はその報告例からも臨床経過は比較的緩徐であるとされているが,確実に進行性で,時に急速な経過をたどることがある.有効な治療法は報告されていない.本症例は肺生検後,無症候に約1年5ヶ月を経過している.
索引用語:多発肺結節, 第VIII因子関連抗原, 開胸肺生検, 血管内細気管支・肺胞細胞腫瘍, 肺腫瘍

受付日:2002年10月31日
受理日:2003年1月20日

肺癌 43 (2):143─147,2003

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