タイトル
第51巻第2号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 原著 ─

マイクロウェーブ処理ホルマリン固定後の二糖類液浸漬法による含気型微小肺癌の術中病理診断の検討―容易に部位が同定でき断端評価も確実な迅速診断法の検証―

細田 裕1, 川原 譲2, 若山 恵3, 篠原 直宏4
国家公務員共済組合連合会東京共済病院 1呼吸器外科, 2病理部, 3東邦大学大森医療センター病理部, 4JA長野厚生連北信総合病院病理検査科

目的.CTで発見されるすりガラス状陰影(GGO)を呈する微小肺癌様病変の診断は結局,病理組織診断に依存する.しかし,現在広く行われている凍結標本を用いた迅速病理診断では,含気臓器である肺は,一度割を加えると虚脱し,切除した肺のどこに病変があるのか特定できない場合がある.このような症例に対して我々はマイクロウェーブ処理ホルマリン固定と二糖類液(蔗糖またはトレハロース)浸漬法で術中病理診断法を行っている.今回その有用性について評価した.方法.我々の施設において過去5年間に行ったCTガイドマーキング併用鏡視下肺部分切除症例15例について検討を行った.切除標本は,切除後ステープラーをはずさず注射器で20%ホルマリンを十分注入する.マイクロウェーブを照射加熱し65℃まで加温し,2~3 mm厚で連続切片として切り出す.これにより,病変は容易に発見できる.病変部の切片を20%蔗糖液(現在は20%トレハロース溶液)に浸漬した.次いで通常通りクライオトームで薄切し,これを迅速診断とした.一方対応する面の標本はそのままパラフィン包埋切片とし,後日その診断ならびに,断端の距離の計測を行った.結果.迅速標本における野口分類を含む病理診断ならびに,切除縁の断端距離などに差はなく,ほぼ同等のものと評価できた.考察.我々の鏡視下部分切除に際して行っている迅速診断法は,病変の検出,野口分類を含む病理診断,病巣から切除までの距離の評価では非常に有用と思われた.
索引用語:マイクロウェーブ固定, 蔗糖浸漬, トレハロース, 凍結標本, 肺癌

受付日:2010年11月9日
受理日:2011年1月24日

肺癌 51 (2):67─71,2011

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