第56巻第5号目次 | Japanese/English |
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─ 症例 ─
原発巣と転移巣がともに当初から薄壁空洞を呈した肺扁平上皮癌の1例
大塚 倫之1,2, 細野 裕貴1, 石島見 佳子1, 上浪 健1, 矢野 幸洋1, 森 雅秀11国立病院機構刀根山病院呼吸器腫瘍内科, 2大阪大学大学院医学系研究科呼吸器・免疫アレルギー内科学
背景.肺癌では時に病巣の空洞化がみられるが,薄壁空洞を呈する症例は少ない.症例.55歳男性.X-3年6月に右上葉S2bの肺化膿症に罹患したが,この時既に右上葉S2aに14 mm大の嚢胞様病変が存在していた.その後,近医で経過観察中に右S2の病変が増大したため,X年11月当院へ再紹介された.胸部CTで右S2からS6にまたがる77 mm大の薄壁空洞病変を認め,尾側では空洞壁が肥厚していた.また両側肺野に大小様々の転移巣を認め,いずれも薄壁空洞を呈していた.肺扁平上皮癌と組織診断し,cisplatinとdocetaxelによる癌化学療法3サイクルを行った.原発巣と転移巣は,いずれもさらに薄壁化し嚢胞様を呈した.薄壁空洞を形成する機序として様々な仮説が報告されているが,本症例ではチェックバルブ機構の関与を疑った.結論.薄壁空洞性病変においても,肺癌の可能性も想定して注意深い経過観察が必要と考えられた.
索引用語:肺扁平上皮癌, 薄壁空洞, チェックバルブ機構, 肺転移
受付日:2016年4月26日
受理日:2016年7月22日
肺癌 56 (5):385─389,2016