タイトル
第61巻第4号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

LC-SCRUM-Asiaでの再解析によりROS1融合遺伝子を検出し,治療につながった肺腺癌の1例

國政 啓1, 松本 慎吾2, 西野 和美1, 久木田 洋児3, 本間 圭一郎4, 田宮 基裕1, 井上 貴子1, 川村 卓久1, 後藤 功一2, 熊谷 融1
1大阪国際がんセンター呼吸器内科, 2国立がん研究センター東病院呼吸器内科, 大阪国際がんセンター 3ゲノム病理ユニット, 4病理・細胞診断科

背景.正確かつ迅速な次世代シーケンサー(NGS)による遺伝子解析の成功が,進行期非小細胞肺癌の治療方針の決定において必須のものとなりつつある.本報告では他国で検出されなかったドライバー変異がLC-SCRUM-Asiaでの解析を通じて検出された症例を報告する.症例.49歳女性,非喫煙者.外国(ベトナム)在住で同国にて右頚部リンパ節の外科的生検により肺腺癌と診断された.胸水貯留を有するIV期症例で,同国でのNGS解析では治療対象となるドライバー変異は検出されなかった(“not detected”).その結果に納得されず,日本での再精査を希望し来日され,LC-SCRUM-Asiaにて胸水検体を用いて再検討を行ったところ,SDC4-ROS1融合遺伝子が検出され,Crizotinibによる治療につながった.他国で用いた検体のDNA,RNAの品質評価を行ったところ,DNAの激しい分断化とRNAの品質劣化を確認し,過固定の影響が示唆された.結論.NGS解析で保存検体を用いる場合には,保存状態を考慮し検体提出を行う必要がある.また,解析結果についてもグローバルレベルでの統一規定などが求められる.
索引用語:次世代シーケンス, ROS1融合遺伝子, LC-SCRUM-Asia, 核酸品質

受付日:2021年1月12日
受理日:2021年3月13日

肺癌 61 (4):303─309,2021

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