タイトル
第64巻第1号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

肺血栓塞栓症を契機に診断されたROS1融合遺伝子陽性肺腺癌の1例

宮平 由佳子1, 角 俊行2,3, 鈴木 敬仁2,3, 越野 友太2,3, 池田 拓海2,3, 渡辺 裕樹2, 山田 裕一2, 千葉 弘文3
函館五稜郭病院 1初期臨床研修, 2呼吸器内科, 3札幌医科大学医学部呼吸器・アレルギー内科

背景ROS1融合遺伝子陽性肺癌(以下,ROS1肺癌)は非小細胞肺癌の1~2%であり,希少な遺伝子変異である.ROS1肺癌は若年者,女性,非喫煙者に多く,病理学的に粘液を有する腺癌が多い.非小細胞肺癌は血栓塞栓症の発生率が増加するが,さらにROS1肺癌は血栓症リスクが上昇する.本症例は肺血栓塞栓症を契機にROS1肺癌と診断された.症例.46歳の男性が息切れと両下腿の疼痛のため受診した.造影CTで肺動脈および左大腿静脈に血栓と,右中葉に結節影と縦隔リンパ節腫脹を認めた.肺血栓塞栓症と診断し,直ちにヘパリン持続注射を開始した.縦隔リンパ節より生検し,右中葉肺腺癌cStage IVA,ROS1融合遺伝子陽性と診断した.ヘパリン持続注射からアピキサバンに変更し,クリゾチニブによる治療を開始した.3ヶ月後,血栓は消失し,原発巣およびリンパ節の縮小を認めた.血栓の消失および腫瘍の縮小は12ヶ月以上継続している.結論.血栓症イベントを有する若年肺癌患者は,希少遺伝子変異の可能性を考慮し,迅速な精査および抗凝固療法を行うことが重要である.
索引用語:肺血栓塞栓症, ROS1融合遺伝子, 肺腺癌, EUS-B-FNA, クリゾチニブ

受付日:2023年8月3日
受理日:2023年10月2日

肺癌 64 (1):28─33,2024

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