タイトル
第64巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

頚部および胸腔鏡アプローチにより完全摘除し得た嚢胞成分を伴う胸腺腫の1例

苅田 涼1, 藤原 大樹1, 松本 寛樹1, 柴 光年1, 飯田 智彦1
1国保直営総合病院君津中央病院呼吸器外科

背景.縦隔腫瘍に対しては,近年では胸腔鏡手術やロボット手術が主流である.腫瘍が大きい場合は十分な視野が得られず,安全性に問題が残る.症例.20歳代男性.健診で胸部異常影を指摘され,当科紹介となった.胸部CTでは前縦隔に最大径11 cmの腫瘤影を認め,頭側は甲状腺左葉下極に接していた.胸部MRIでは腫瘍の大部分は嚢胞様であったが最大径4 cmの充実成分を含み,手術適応があると判断した.若年のため,胸骨正中切開を避け,耳鼻咽喉科による頚部操作と呼吸器外科による胸腔鏡操作で腫瘍摘除の方針とした.頚部操作では腫瘍につながる下甲状腺静脈を切離し,左腕頭静脈上縁まで腫瘍を剥離した.右胸腔鏡操作では,視野確保のため嚢胞内容液を吸引し減量後,腫瘍を摘出した.術後経過は良好で術後5日目に退院となった.病理診断では腫瘍は被膜により被包化されており,腫瘍内部の大部分は嚢胞で,一部に充実性腫瘍を認めた.正岡分類I期,WHO分類type B2型の胸腺腫であった.結論.嚢胞内容液の回収により腫瘍体積を減少しつつ頚部操作を組み合わせることで胸骨正中切開を回避し,かつ安全に胸腔鏡下での切除が可能であった.
索引用語:胸腺腫, 胸腔鏡手術, 頚部アプローチ

受付日:2023年11月16日
受理日:2024年2月22日

肺癌 64 (3):168─173,2024

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