タイトル
第37巻第1号目次 Japanese/English

─ 原著 ─

増加する悪性中皮腫―石綿高度曝露地域からの報告―

片山 正一1, 中野 喜久雄2, 平本 雄彦2, 早川 正宣3, 中村 憲二3, 岸槌 健太郎4,5, 井内 康輝4
1国立呉病院・中国地方がんセンター臨床検査科, 2同 呼吸器内科, 3同 呼吸器外科, 4広島大学第2病理, 5現 呉市医師会病院内科

国立呉病院において経験した悪性中皮腫症例は21例(担癌生存1例,15剖検例含む)であり,その7割以上は石綿関連職歴を有していた.当院における中皮腫剖検例の全剖検例に占める比率は全国例に比較して多く,殊に昭和60年~平成元年度の5年間では1.12%を示し,全国例の5倍以上の頻度を示した.中皮腫剖検例において検出しえた石綿繊維はクロシドライトが最も多く,次いでアモサイトであり,この両者で全体の8割を占めた.石綿繊維数は昭和63年度までに剖検した6例では平均2200万本/グラム肺であり,平成元年度以降に剖検した7例の平均200万本/グラム肺の10倍以上にのぼり,中皮腫発生までの潜伏期間を考慮すれば,戦前,前後の高度石綿曝露が推定された.昭和年代の中皮腫は曝露された石綿量が大量であり,原発部位,組織型も多彩であるのに対し,平成年代のそれは曝露石綿量が1/10程と少なく,原発部位は胸膜,組織型は上皮型が多いことが判明した.
索引用語:Mesothelioma, Asbestos fiber, Occupational hazard

受付日:1996年7月15日
受理日:1996年11月15日

肺癌 37 (1):23─32,1997

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