タイトル
第37巻第1号目次 Japanese/English

─ 症例 ─

砂粒体による広範な腫瘍内石灰化を生じた肺腺癌の1例

森 公介, 山本 和彦, 川井 治之, 羽場 礼次**
公立周桑病院内科, 岡山大学第2内科, **済生会今治病院病理

患者は52歳男性.増強する呼吸困難,血痰にて入院し,胸部X線像にて,左下葉に径8 cm大の腫瘤を認めた.胸部CT像では腫瘤の内部に広範なびまんの性の点状石灰化像が認められ,MRIでは腫瘤はT1強調像で高信号,T2強調像で低信号を呈していた.頸部,縦隔および肺門のリンパ節転移巣と推定される結節内にCTで比較的均一な石灰化像を認めたが,thin-slice CTではこれらの石灰化像は微細で,リンパ節の辺縁にそって沈着していることが判明した.頸部リンパ節生検より砂粒体を伴う腺癌が証明された.気管支鏡では左下幹に浸潤および多発性小白色結節を認め,この白色結節も病理学的に砂粒小体の集族であった.肺腺癌が砂粒体を伴い,CT上腫瘍内のみならず転移リンパ節内にも広範にびまん性の小石灰化像を呈することは極めて稀である. 腫瘍内,リンパ節内の石灰化像は砂粒体を念頭におきthin-slice CTでの詳細な分析が必要である.
索引用語:Psammoma bodies, Adenocarcinoma of the lung, Calcified lymph node, MRI, Thin-slice CT

受付日:1996年7月15日
受理日:1996年10月18日

肺癌 37 (1):67─73,1997

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