タイトル
第37巻第1号目次 Japanese/English

─ 症例 ─

肺扁平上皮癌と肺非定型抗酸菌症が同一病巣内に共存した1切除例

金藤 睦実, 山田 耕三, 野田 和正, 田尻 道彦, 亀田 陽一**
神奈川県立がんセンター内科3科, 同 外科1科, **同 検査1科

症例は喫煙歴のある,74歳の男性である.左胸痛を主訴に近医より紹介され,胸部X線写真で左上葉に空洞を伴う異常陰影を認めた.画像所見では当初肺結核を疑ったが,術前の病巣擦過細胞診において肺癌と診断されたため,左上葉切除術を施行した.切除肺の病理所見では空洞内腔面に低分化扁平上皮癌と乾酪壊死を伴う肉芽腫性病変が混在しており,同時に壊死部に抗酸菌も認め,後にMycobacterium avium であることが判明した.術後9ヵ月経過した現在,肺癌および肺非定型抗酸菌症ともに再発は認めていない.肺癌と肺非定型抗酸菌症が同一病巣内に共存した例は我々が検索し得た範囲内では認められない.高齢者の増加に伴い非定型抗酸菌症の全抗酸菌症中に占める割合が増加しており,本症例は肺癌と非定型抗酸菌症の合併例の診断に寄与すると考え報告する.
索引用語:Atypical Mycobacteriosis, Lung cancer, CT diagnosis

受付日:1996年10月15日
受理日:1996年11月25日

肺癌 37 (1):93─98,1997

ページの先頭へ