タイトル
第37巻第2号目次 Japanese/English

─ 原著 ─

肺癌におけるGST-πとメタロチオネインの発現

藤野 了1, 坂本 晃2, 福田 実1, 高谷 洋1, 福田 正明3, 早田 宏4, 井上 祐一5, 木下 明敏6, 岡 三喜男1, 河野 茂1
1長崎大学第2内科, 2長崎市立成人病センター内科, 3日本赤十字長崎原爆病院内科, 4公立みつぎ総合病院内科, 5健康保健諌早総合病院内科, 6長崎市立市民病院内科

細胞内解毒酵素であるグルタチオンS-トランスフェラーゼπ(GST-π)やメタロチオネイン(MT)が癌細胞の抗癌剤耐性に関与していることが実験的に示唆されている.本研究では,GST-πとMTの発現を手術肺癌97例で免疫組織染色にて分析し,化学療法との関係を検討した.GST-πは未治療の非小細胞肺癌56例で86%陽性と小細胞肺癌より有意に発現が高かった(P<0.0001).未治療の小細胞肺癌8例すべて陰性,シスプラチンを含む化学療法を行った18例の小細胞肺癌で78%陽性と有意に化学療法により誘導された(P=0.0003).MTは未治療の非小細胞肺癌56例で28%陽性,治療の非小細胞肺癌15例で80%陽性と有意に化学療法により誘導された(P=0.0005).非小細胞肺癌の腫瘍マーカーとしてGST-πは有用であり,小細胞肺癌で治療により有意にGST-πが誘導され薬剤耐性に関与し,非小細胞肺癌で治療により有意にMTが誘導され薬剤耐性に関与すると考える.
索引用語:Glutathione s-transferase-π, Metallothionein, Lung Cancer, Drug resistance, Chemotherapy

受付日:1996年3月29日
受理日:1996年12月10日

肺癌 37 (2):135─141,1997

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