第37巻第2号目次 | Japanese/English |
─ 原著 ─
小細胞肺癌脳転移に対する放射線治療と全身化学療法
多田 卓仁, 水口 和夫, 赤江 真由子, 小塚 隆弘, 梁 尚志*, 益田 典幸*, 松井 薫*, 川瀬 一郎*, 中島 俊文**, 西岡 雅行**大阪府立羽曳野病院放射線科, *同 第2内科, **大阪市立大学放射線科
脳転移巣では血液脳関門が破壊されている可能性があることから小細胞肺癌脳転移症例に対し全身化学療法が試みられるようになった.従来から行われている放射線治療と化学療法の役割を明らかにする目的で,小細胞肺癌脳転移症例の治療成績をretrospectiveに検討した.放射線治療,化学療法の奏効率は55%,31%であった.放射線治療単独,化学療法単独および両者併用のMSTは1.6ヶ月,4.0ヶ月,6.1ヶ月で,前2者と後者の間に有意差が見られた.脳転移による死亡は49%,63%,42%であった.化学療法の新鮮例,再発例のうち初回化学療法CR例およびPR例のMSTは6.1ヶ月,6.1ヶ月,3.3ヶ月で,前2者では脳転移の存在が化学療法のcontraindicationにはならないと考えられた.放射線治療は生存期間並びに死因を考慮すると化学療法に併用すべきであり,また奏効率が高く毒性は低いので対症療法としても有用と考えられた.
索引用語:Small cell lung cancer, Brain metastasis, Radiotherapy, Chemotherapy
受付日:1996年12月16日
受理日:1997年2月21日
肺癌 37 (2):163─167,1997