タイトル
第37巻第2号目次 Japanese/English

─ 症例 ─

多発性の肺内転移巣に薄壁空洞を生じ,化学療法により空洞の消失が認められた肺扁平上皮癌の1例

宮坂 崇, 大田 健, 中島 幹夫, 山田 和人, 中野 純一, 真野 健次
帝京大学第2内科

症例は73歳,男性.健康診断で指摘された胸部異常陰影精査目的で入院.入院時の胸部単純X線及び胸部CT上右S9に腫瘤状陰影を認め,両肺野に多発性の薄壁空洞を伴った転移巣が認められた.経気管支肺生検で低,中分化型の扁平上皮癌であった.空洞は化学療法により,一部は嚢胞状変化を残し,他は変化を残さずに消失が認められた.多発性の肺内転移巣における薄壁空洞形成の原因として,腫瘍中心の乏血壊死によるもの,既存の嚢胞壁に癌の浸潤が見られたもの,および腫瘍結節により気管支の弁状狭窄が起こり,check valve機構で気腫性嚢胞が形成されその周囲に癌が進展したものの混在が考えられた.剖検による所見ではなく,臨床経過より薄壁空洞の形成機序を推察し得た報告は少なく,貴重な症例と考えられた.
索引用語:Squamous cell carcinoma of the lung, Pulmonary metastasis, Multiple thin walled cavities, Check valve mechanism

受付日:1996年10月17日
受理日:1997年1月22日

肺癌 37 (2):203─208,1997

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