 |
第37巻第2号目次 | Japanese/English |
─ 症例 ─
Well-differentiated fetal adenocarcinoma（WDFA）の1切除例
泉 浩, 見上 光平, 二川 俊郎, 細田 泰之, 益田 貞彦＊, 植草 利公＊＊順天堂大学胸部外科, ＊東京逓信病院呼吸器外科, ＊＊聖路加国際病院病理学
症例は32歳女性．1993年6月に胃癌にて胃亜全摘術施行，同時期に胸部X線上右上肺野に直径約2.5 cmの異常陰影を指摘．約10ヵ月の経過観察中約3 cmに拡大した．右上葉B2経気管支肺生検で高分化型腺癌の診断にて1994年4月に右上葉切除及び肺門縦隔リンパ節郭清術を施行した．切除標本よりWell-differentiated fetal adenocarcinoma（WDFA）と診断した．リンパ節には転移はなく，肺癌取扱規約の術後病期分類ではp-T1N0M0 Stage Iであった．本症例の特徴は病理組織学的に明瞭な腺管構造とmorulaと呼ばれる充実性発育を呈する上皮成分が主体で肉腫様成分を欠き，これらが胎生期の肺に類似していると考えられる．報告例の予後は良好例が多いが，本症例は組織内で肺静脈への浸潤を認め，術後1年6ヵ月より両側肺野に多発性腫瘍を認めている．
索引用語：Well-differentiated fetal adenocarcinoma (WDFA), Pulmonary blastoma
受付日：1996年7月31日
受理日：1997年2月10日
肺癌 37 (2)：231─235，1997
