 |
第37巻第3号目次 | Japanese/English |
─ 原著 ─
剖検症例における肺多発癌の頻度・内容・推移―日本病理剖検輯報（1958～92年度症例）による検討―
森田 豊彦国立国際医療センター病理
剖検輯報35年分の肺多発癌（男性600，女性82例）を10年区分の推移を含め検討した．肺癌との相対頻度は男女0.001から男性0.02，女性0.01へ漸増し，肺癌含む重複癌中男性10%，女性5%となった．男女比は7を超え肺癌全体より有意に高い．男女ピーク年齢は70歳代となり，平均年齢も70歳を超え，肺癌全体より有意に高齢である．各例につき主（致死的）と従（非致死的）の肺癌を決め集計し，中央に肺癌全体を置くと規則的な組織型移行があり，主の肺癌に小細胞癌と大細胞癌，従の肺癌に腺癌と扁平上皮癌が多い．組織型組合せは男女とも腺癌＋扁平上皮癌が最多である．同一組織型は，男性は小細胞癌＋扁平上皮癌に次ぎ3位で，うち扁平上皮癌の重複が2/3，女性は2位で，腺癌の重複が特に多い．左右発生は男女両側性が2/3，同側性の2/3は右肺，1/3は左肺発生である．肺葉別は両上葉が最多で全体の1/4，両下葉が次ぎ，対側上下葉発生は少ない．同側発生は上下葉発生が多い．肺多発癌発生様式は肺の解剖学的位置関係が密接に関連する．
索引用語：Multiple lung cancer cases, Annual of the Autopsy Cases in Japan, Age, sex and histological types, Fatal and non-fatal lung cancer, Location in the lungs (right, left and lobes)
受付日：1996年9月26日
受理日：1997年1月10日
肺癌 37 (3)：283─294，1997
