タイトル
第37巻第3号目次 Japanese/English

─ 症例 ─

きわめて緩徐に経過した肺巨細胞癌の1例

淀縄 聡, 小川 功, 山部 克己
茨城西南医療センター病院外科

症例は37歳,男性.7年前より右肺良性腫瘍の診断にて近医で経過観察されていたが,今年になり陰影が増大したため当院に紹介された.胸部X線,CTで右S6に径2 cm大の辺縁明瞭で内部均一な円形の腫瘤陰影を認め,肺過誤腫および硬化性血管腫が疑われたが確定診断は得られず,開胸肺生検術を施行した.腫瘍は肺門近くに存在し,腫瘍を核出し捺印細胞診を行ったところ,異型性の強い腫瘍細胞を認め,肉腫あるいは大細胞癌が疑われたため,右肺下葉切除術および縦隔リンパ節郭清を施行した.組織像では未分化な多核巨細胞を多数認め,免疫染色と併せ原発性肺巨細胞癌,T1N0M0と診断した.術後9ヵ月の現在再発を認めていない.肺巨細胞癌は大細胞癌の1亜型であり,臨床的に早期に血行性,リンパ行性転移を来たしあらゆる治療に抵抗する予後不良の疾患であるが,本症例は臨床経過と病理組織診断が著しく矛盾する極めて稀な症例と考えられた.
索引用語:Giant cell carcinoma of the lung, Slow growing, Open lung biopsy, Extirpation

受付日:1996年10月1日
受理日:1997年3月17日

肺癌 37 (3):365─370,1997

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