タイトル
第37巻第3号目次 Japanese/English

─ 症例 ─

左鎖骨上窩原発悪性血管内皮腫の1例

斎藤 博之, 水沢 彰郎, 佐藤 和弘, 江部 達夫
長岡赤十字病院呼吸器科

66歳女性,喀嗽,嗄声,母指頭大の左鎖骨上窩の皮下腫瘤を主訴に来院.腫瘤生検の結果,第VIII因子関連抗原による免疫組織化学染色で胞体内が染色され悪性血管内皮腫と診断した.当初Virchowリンパ節転移を考え消化管を中心に全身検索を行ったが他に所見を認めず,左鎖骨上窩を原発とした軟部肉腫と判断した.治療は放射線療法を選択し,ライナックを左側頚部から縦隔にかけ甲状腺を含み広範囲にまず40 Gy,次いで腫瘤へ限局して28 Gy,計68 Gy照射したが不変であった.その後原発巣は増大しなかったが多発肺・肝・骨転移に加え,放射線療法後の甲状腺機能低下による左胸水・心嚢水が出現し,全経過2年6ヵ月で亡くなった.悪性血管内皮腫は大腿部に好発し,頭頸部・顔面の皮膚または皮下組織などにも発生する稀な悪性腫瘍とされる.本症例のように,左鎖骨上窩の皮下腫瘤として原発した報告は我々が検索した限りではみられず,貴重な症例と考え報告した.
索引用語:Malignant hemangioendothelioma, Supraclavicular fossa, Hoarseness, Radiotherapy, Hypothyroidism

受付日:1996年10月28日
受理日:1997年3月19日

肺癌 37 (3):391─396,1997

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