タイトル
第37巻第4号目次 Japanese/English

─ 原著 ─

Dispaseによるヒト肺小細胞癌多細胞スフェロイドに対する抗癌剤Carboplatinの作用増強効果に関する研究

松岡 英仁, 岡田 昌義, 石井 昇, 前田 盛
神戸大学第2外科, 同 第2病理

ヒト肺小細胞癌由来cell line(PC-6,SBC-1,NCL-H60)より,YuhasらのLiquid overlay culture methodで作製した多細胞スフェロイド(MTS,3週間で径約700 μm)に対するCarboplatinの作用を細菌中性プロテアーゼであるDispaseが増強することを確認した.すなわち,1)monolayerのcell lineではsurvival fraction(SF)はCarboplatinの濃度に対して指数関数的に減少し,2)MTSでは中等度の濃度でmonolayerに対比しSFの増加が認められた.3)単独でSFに対し影響力を持たないDispaseの併用により,SFが再びmonolayerの値に近づいた.4)Trypsin処理で選択的に分離したcoreにおける比較では,Dispaseを同時に接触させた群でSF値の低下がみられた.Dispaseは細胞間マトリックスを分解する作用をもっており,Carboplatinの浸透性を亢進せしめ,間接的にその効果を増強したことが推察された.肺小細胞癌に対し,単細胞レベルで感受性の強い抗癌剤が充分な効果を得るために有用な補助手段となりえると考える.
索引用語:Small cell lung carcinoma, Chemotherapy, Multicellular tumor spheroid, Carboplatin, Dispase

受付日:1996年12月13日
受理日:1997年5月21日

肺癌 37 (4):467─474,1997

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