 |
第37巻第4号目次 | Japanese/English |
─ 症例 ─
母指中手骨転移を契機に発見された肺扁平上皮癌の1例
畠山 忍, 立花 昭生, 鈴木 和恵, 岡野 弘＊焼津市立総合病院呼吸器科, ＊東京慈恵会医科大学第三病院内科第2
右母指の疼痛を主訴に受診し，肺扁平上皮癌とその母指中手骨転移と診断した一例を経験したので報告する．症例は72歳，男性．右母指の腫脹と疼痛があり，整形外科を受診．胸部X線写真で左下肺野に浸潤影を指摘され当科受診．気管支鏡にて舌支入口部に出血を伴う表面不整の腫瘤を認め，同部の生検にて扁平上皮癌およびその右母指転移と診断した．T2N0M1 Stage IV の評価で，CDDP+VDS+MMCの化学療法を1クール施行しNCであり，左胸部原発巣と右母指中手骨転移部に放射線治療を行い退院した．右母指は変形を残し，痛みは消失した．肺癌の指骨転移は稀であり，臨床的に発赤，腫脹，疼痛等の炎症所見を伴うことが多く，発症時には，骨髄炎や関節リウマチ，痛風等として治療を受けることが多い．炎症性疾患として長期に治療を受けることで，診断の遅れとなることもあり，骨X線写真の所見に注意し，肺癌を含む悪性腫瘍の指骨転移の可能性も考慮にいれて診断すべきである．
索引用語：Lung cancer, Squamous cell carcinoma, Metastasis to the metacarpal bone
受付日：1997年3月11日
受理日：1997年5月1日
肺癌 37 (4)：531─535，1997
