タイトル
第37巻第6号目次 Japanese/English

─ 原著 ─

原発性肺腺癌に於ける線維化巣内にみられる癌細胞の病理組織学的検討

田村 光信, 廣島 健三, 豊崎 哲也, 高野 浩昌, 嶋田 晃一郎, 大和田 英美
千葉大学肺癌研究施設病理研究部門, 独協医科大学胸部外科学教室

原発性肺癌手術例のうち弾性線維増生線維化巣(以下,線維化巣と略)を認める乳頭型腺癌56症例を,病理組織学的に検討し線維化巣内の癌細胞の増殖形態を3群(H群:線維化巣内に癌細胞が小胞巣を多数形成し比較的びまん性に増殖している.L群:線維化巣内には癌細胞が極めて乏しい.M群:H群とL群の中間)に分類し,線維化巣内の癌細胞の増殖形態と活性度,基質結合織における蛋白分解酵素の発現について検討した.腫瘍径が3 cm以上で所属リンパ節転移や胸膜浸潤が高度な例は,H群の占める割合が高い傾向を認めた.NORs数はH群は4.6,M群4.5,L群4.2で,PCNA陽性率はH群69.4%,M群58.9%,L群51.1%で,H群はM群,L群に較べ有意に高度であった.カテプシンBの発現はL群,M群,H群の順に陽性例を多く認めた.以上の結果は肺腺癌の線維化巣内の癌細胞の増殖形態が癌全体の浸潤性増殖像の指標となり得ることを示唆している.
索引用語:Pulmonary adenocarcinoma, Fibroelastosis, Argyrophilic nucleolar organizer regions (AgNORs), Proliferating cell nuclear antigen (PCNA), Cathepsin B

受付日:1997年6月24日
受理日:1997年8月26日

肺癌 37 (6):867─876,1997

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