タイトル
第37巻第6号目次 Japanese/English

─ 症例 ─

CTで偶然発見された肺の異型腺腫様過形成の1例

松本 祥一1, 足立 秀治2, 河野 通雄2, 安部 能崇1, 宮本 好博3, 大林 千穂4
1国立姫路病院放射線科, 2神戸大学放射線科, 3国立姫路病院呼吸器外科, 4県立加古川病院病理部

肺癌を伴わずCTで偶然発見された異型腺腫様過形成(以下AAH)の1例を経験し,文献的考察を加えて報告した.症例は68歳男性で胸部CT上,右S4にφ7 mm大のスリガラス状の淡い高吸収域がみられ,内部に濃い高吸収域はみられなかった.Multiplanar reconstruction(以下MPR)矢状断像でも円形の限局性スリガラス状高吸収域としてみられ,球形の腫瘤性病変と考えられた.切除標本では立方状異型細胞が肺胞隔壁に沿って肺胞上皮を置換して進展し,軽度核異型を伴うことからAAHと診断された.CTでみられたスリガラス状の淡い高吸収域は立方状異型細胞が肺胞上皮を置換して進展する部と一致していた.またMPRは腫瘍の立体像の把握に有用であり,他疾患との鑑別診断に寄与する可能性が示唆された.AAHは野口分類のA型と組織学的に良く類似し,腺癌の前癌状態と考えられるがCT上は鑑別困難と思われた.
索引用語:Atypical adenomatous hyperplasia, Bronchioloalveolar cell adenoma, Lung cancer, CT, Multiplanar reconstruction (MPR)

受付日:1997年5月26日
受理日:1997年6月23日

肺癌 37 (6):887─891,1997

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