タイトル
第38巻第1号目次 Japanese/English

─ 原著 ─

末梢型肺腺癌における腫瘍血管侵襲の組織学的検討―特に中心部線維化巣形成との関連性―

江藤 尚, 鈴木 春見, 本多 淳郎, 長島 康之**
静岡県立総合病院呼吸器科, 県立愛知病院臨床研究検査部, **静岡県立総合病院呼吸器外科, **現 瀬名病院

末梢型肺腺癌の腫瘍血管侵襲(VI)部位を組織学的に検討した.対象は腫瘍径3 cm以下の切除例で,間質弾性線維増生網(EFW)の明らかな粘液非産生型末梢型肺腺癌で,組織学的に血管内腫瘍細胞塞栓(ITE)を明瞭に認めた22例である.腫瘍の間質形成所見を,断裂したEFWからなる中心部線維化巣(CF)と,その周囲肺胞を被覆増殖するreplacement growth(RG)に分け,CFは更に1)Type 1-like EFW,2)collagenized EFW,3)collapsed EFWに分けて,ITEの出現を部位別に検討した.結果;VIは15例35ヵ所でRGに,CF内では11例15ヵ所で1)に,11例13ヵ所で2)に,1例2ヵ所で3)にみられた.いずれもCF辺縁でRGとの境界部に多い.また,CF内での膠原化の程度に比例してRGでのVIの頻度が増加する傾向がみられた.CF内の血管病変はVIよりも器質化血管閉塞や破壊が多くみられた.この結果から,VIは末梢型肺腺癌の特有な腫瘍間質であるCF形成過程での微小環境循環障害で生ずる新生血管を機転として始まり,CF内の膠原化が進むと,より辺縁側の進展部(RG)で腫瘍塞栓として観察されるようになると考えられた.
索引用語:Peripheral lung adenocarcinoma, Vascular invasion, Elastotic framework, Central fibrosis

受付日:1997年7月30日
受理日:1997年10月28日

肺癌 38 (1):11─17,1998

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