タイトル
第38巻第1号目次 Japanese/English

─ 症例 ─

気腫性肺嚢胞壁に発生した胸壁浸潤肺癌の1切除例

守尾 篤, 坂口 浩三, 二川 俊郎, 羽田 圓城, 宮元 秀昭, 富永 滋**
三井記念病院呼吸器センター外科, 順天堂大学医学部胸部外科, **順天堂大学医学部付属順天堂浦安病院内科

症例は38歳女性.1986年から,両側気腫性肺嚢胞にて経過観察されていた.1995年12月,右胸部痛,血痰が出現し,胸部単純X線写真にて右上葉の腫瘤陰影を認めた.経皮肺生検にて肺腺癌を疑ったが確定診断にはいたらなかった.また画像診断では,肺癌を第一に疑ったが,胸膜中皮腫等の胸壁由来の腫瘍も否定できなかった.胸腔鏡で肺癌胸壁浸潤と診断した後,右上中葉,胸壁合併切除およびR2b郭清を施行した.肺癌は気腫性肺嚢胞壁より発生し,嚢胞内腔を充満する様に発育した低分化型腺癌で,胸壁に浸潤しておりp-T3N0M0-stage IIIAであった.併せて,気腫性肺嚢胞に合併した肺癌の切除例自験例12例について検討した.気腫性肺嚢胞は肺癌の高危険群であり,厳重な経過観察を行うとともに癌を疑った場合には積極的な診断が必要と思われた.
索引用語:Lung cancer, Emphysematous bullae

受付日:1997年3月3日
受理日:1997年10月28日

肺癌 38 (1):37─42,1998

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