タイトル
第38巻第1号目次 Japanese/English

─ 症例 ─

再発時カルチノイド症候群を認めた長期担癌生存中の非定型肺カルチノイドの1例

沖津 宏, 津田 洋, 川田 正史, 田渕 寛, 佐尾山 信夫, 吉田 冲
国立善通寺病院外科

症例は62歳,女性で1991年3月13日に肺癌疑いにて右中下葉切除(左房合併切除)を施行,病理所見は非定型カルチノイドでpT4N1M1(PUL)であった.術後4年3ヵ月に左乳房D領域に約1 cm大の腫瘤を触知し,乳癌の診断下に1995年8月3日にquadrantectomyを施行した.病理所見ではGrimelius及びchromogranin陽性の神経内分泌顆粒を認め,肺カルチノイドの乳腺転移と診断した.術後3ヵ月頃より,皮膚の紅潮,喘鳴,下痢などカルチノイド症候群を呈し,血中セロトニン0.90 μg/ml,血中5-HIAA 75.6 ng/ml及び尿中5-HIAA 17.3 mg/dayと著増を示した.酢酸オクトレチオドの投与にて同症候群は軽快したが,1996年4月には気管支断端再発,1996年10月に腹壁,1997年3月に右乳腺に転移を認め,各々治療した.現在,頭皮及び腹壁に転移を認め,血中セロトニン2.86 μg/ml,血中5-HIAA 132.7 ng/ml及び尿中5-HIAA 34.8 mg/dayとさらなる著増を認めているが,原発巣術後6年9ヶ月の現在,外来経過観察中である.
索引用語:Atypical cartinoid of the lung, Metastasis of the breast, Cartinoid syndrome, Octreotide

受付日:1997年10月22日
受理日:1997年12月4日

肺癌 38 (1):63─68,1998

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