タイトル
第38巻第2号目次 Japanese/English

─ 原著 ─

喉頭癌治療後に発症した肺癌症例の検討

田中 明彦, 佐藤 諦, 中瀬 篤信
市立札幌病院呼吸器外科, 同 心臓血管外科

当科で経験した肺癌症例128例中13例に先行する他臓器癌を認め,喉頭癌先行例が5例とその中で最も多かった.5症例は,全例男性で重喫煙者であり,平均年齢73.8歳であった.喉頭癌と肺癌の組織型は,肺腺癌の1例を除いて,全て中または高分化型の扁平上皮癌であったが,先の喉頭癌に根治的治療が行われており,リンパ節転移陰性であったことより,重複肺癌と診断した.肺癌では,他肺葉に独立して径1 cm以下の小癌病巣を有していた症例が3例と多かったが,リンパ節転移や予後より検討すると,多発肺癌であった可能性が高かった.手術は,全例に肺葉切除が施行され,他肺葉に存在した小癌病巣に対しては,肺部分切除が加えられた.1例が術後41ヵ月目に癌死し,1例が担癌生存中であり,3例は再発なく元気に生活している.喉頭癌症例では,重複肺癌及び多発肺癌の発症に注意する必要があり,その早期発見と積極的治療が予後の改善に寄与すると考えられた.
索引用語:Laryngeal cancer, Lung cancer, Multiple primary malignant tumors, Multiple primary lung cancers

受付日:1997年10月13日
受理日:1998年3月20日

肺癌 38 (2):131─138,1998

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